個人的な日記をひとつ。
先日かつての教え子と会った。彼は現役の自衛官だ。
彼の方から、「福島」の任務が終わり休暇をもらい帰る予定なので会いませんかと電話があったのである。
直接会うのはおそらく4年ぶりぐらいで、当時彼が入隊したばかりぐらいの時だったと思う。
今では、10人ほどの部下を指導しているらしい。
「部下にいろいろと教えなければいけないことはありますが、"先生"の授業を受けていてよかったです」とうれしいことをいってくれる。教えたいことをできるだけわかりやすく言語化するという僕の態度が彼の参照するところであるらしい。
そして、"さすが自分の教え子"であるというべきか、自衛隊という特殊な組織にいても複眼的な目をもっている。自分の任務を俯瞰的なところから見ている。

話は当然「3.11」以降のことになる。ちなみに彼が派遣されたの地域は、南相馬だ。
あっけらかんと「自分は12mSV被爆しました」と言っていた。
すでに実証されているはいることだけれども、彼と話しながら見えてきたことは、政府の危機管理のありかたの杜撰さだ。現場レベルの話を直接聞くと「そりゃ、酷い」としかいいようがない。実態を聞いて、あえて言うが、某企業と政府は、現場で生命を危険にさらしながら働いている人間をどのように思っているのかと考えざるを得なかった。(←「意見には個人差があります」@『今夜も生でさだまさし』)
他にいろいろ聞いたが、まあ書けない。

一通り話したあと、互いに同じ武道をやっているので、道場で「手合わせ」。
自衛隊仕込みの徒手格闘でかるくスパーリングをしてみたが、さすがに捌くことができなかった。見事に金的の蹴りを入れられた(もちろん寸止め)。自分の力量を認識した後、互いの技、技術の交換。互いの技にない部分を教えあう。

なにごとにも当てはまると思うが、向上するきっかけを与えてくれるのは、自らに欠けているものを認識することである。技の研究は、自分自身を掘り下げることにつながっている。流派は違うけれども、そのことをぼくらはおそらく共有している。そうした相手と稽古できる時間は、至極楽しいし、気持ちいい。

また稽古しようと約束して、互いに帰路についた。(もりやま)